ジャックホワイトから学ぶ、創発的なあり方

私が学んだ、集合知にリーチする(皆のアイデアをつないで、より賢いアイデアやアクションをつくる)ためのあり方として、こんなことを書きました。

「皆で器になる」
今回は少し趣向を変えて説明します。

実は、その「皆で器になる」実践は、私にとって馴染みのないものではありません。

音楽です。
どちらかというと、感覚的にはこっちから入ったのですが、音楽でないやり方で創発を語り・扱いたいと思うようになった今、改めて音楽に目を向けたいと思いました。

先日体験した「皆で器になる」感覚ですが、

実は、自分ひとりで、極めて高い集中を持って、音楽を演奏している時に起こる内的な体験と近いです。私の中のいくつかの人格が、対話して調和した状態というのか。

また、私は定期的に音楽好きの仲間の集いで、楽器持ち寄りのセッションをしているのですが、それが上手くグルーヴした時の感覚とも似ています。私はへたっぴなので、これは稀ですが。

そして、それは必ずしも自分が演奏している時だけではありません。「すごいライブ」に参加した時もそれは起きます。これが私は多いかな。

そんな「すごいライブ」を毎度やってくれる人がいます。

ジャック・ホワイトという、お気に入りのミュージシャンがいます。彼のライブは、私には常に創発的に見えています。私は、ちょうファンなのです。

(画像出典 Wikipedia)

そこで、思い付きました。

彼のふるまいと発言から「どうやって皆で器になり、集合知にリーチするか」ということのヒントを収穫できないか?


それを最もらしく発信して、ジャックのコアなファンが増えたらいいんだ!そしてレコードを買ってもらい、間接的に彼を刺激し、もっと日本でライブをしてもらおう!(こちらが本丸)


そして、通勤電車の中で、今回の私がジャックに会うためのチャレンジが始まりました。

まずは、彼の人柄を見てもらうのがいいですね。ここで脱落する人が多くありませんように。
ビデオの中で言うように、彼はテクノロジー嫌いとして知られています。テクノロジーは感情と真実、創造性を削ぐらしいです。

アナログ・レコードっていうのはメカニカルな物体であって、音楽を本当に愛する人々を惹きつけるんだよ。音楽を本当に愛する人々は、実際にお店に足を運んで、欲しいレコードを探して手に入れる。単に車を運転しながら音楽を聴きたいっていう人たちもいるけど、それはそれで構わない。でも本当に音楽を愛しているなら、実際にどこかに行って、何かを手に入れて、何かを読んで、何かを眺めたいと思うものなんだ。そういう欲求を満たしてくれる、最高の形態なのさ。僕自身は、それがカセットテープだろうが8トラックのテープだろうが、手で触れることが出来れば何だって構わなかった。ただアナログ・レコードが最高の形態だというだけ。本当に美しいものだからね。だって、針で溝を引っかいているだけなんだよ。これ以上に美しいものってあるかい? 

バカなんです。この偏執さが好きです。ただ、ストリーミング主流の時代で、CDが売れない今、アナログレコードが伸びてきているのは彼の功績が大きいと言われていて、このバカさが人に愛され、ムーブメントを起こすために大切な気がします。

さて、以下が本題で、私が色々な資料をひっかき集めて、「みなで器になる」にあたっての、彼の内的態度、場への参加のあり方について、考えてみました。

これは実に、私のファシリテーターとしての心構えでもあります。

① コントロールをしない。

彼は、演者と観客が一体となって熱狂する場をつくる、即興的なミュージシャンして知られています。
彼のライブで、音楽が神がかって美しく聞こえる時、彼が叫ぶ言葉はこうです。

「Let it happen through you(お前を通じて、今ここで起ころうとしていることを起こせ)」

 「起きたいと思っていることを妨げない」って感じでもありますね。

何者からも支配されないようにしようと思うとして。君が何かを書いたり、つくったりする時にね。でも、コントロールされているんだ。もし君が、全てを自分が意図したように、物事を起こそうとしてしまうとね。だから、ただ座って、アンテナになるんだ。自分を通じて、そこで起きようとしていることが起こるようにすればいい。起こるままにすればするほど、コントロールを離れれば離れるほど、それは美しくなると思うよ。

②計画をして、現場で手放す。

聴衆を観察して、その場で演奏する曲を決めたり、ある曲と別の曲を混ぜて演奏したり、原型を留めないくらいにアレンジして演奏したりします。それは、コントロール好きの演者だったら、相当におそろしいことだと思うんです。上手くいかなかった時のリスクのことを考えてしまって。

俺らのようにセットリストなしにプレイすると、本当の意味で"ライヴ"だから、それが如実に伝わってくる。ポップ・シンガーがバック・バンドを雇って、毎晩同じセットのライヴをやってアルバムを再現するのとは、わけが違うんだよ。それって本当の意味で"プレイ"することには当たらない。自分の背後でウェディング・バンドが演奏しているようなものさ。だから俺らの場合、彼らと毎晩一緒にプレイして理解を深めて"ああ、あの曲のこの部分には彼にヴォーカル・ハーモニーを加えてもらうのがいいな"とか、分かるんだよ。

③新しい環境に身を置く。 

真っ白な状態でスタジオに2週間入ってアルバムを1本仕上げたり、女性だけのバンドでやる、船の上でやる、ボーリング場でやる、牛を見ながらやる。

今まで作ったアルバムすべてで、何かしらの挑戦を自分に課して、自分に揺さぶりをかけているんだ。俺は同じ方法で曲を書いたことがないから。全ての曲は違うスタイルで作ってきた。だって、もし自分に揺さぶりをかけなかったら、自分でエキサイトすることをやらなかったら、世界にこれを聴いてくれ、なんていう価値なんかないと思うからね」

④ストーリーに耳を澄ませる。

曲や歌詞を書くために、実在の人物を丁寧に取材たり、10代の時の自分の日記に返事をしたり、なにかをつくるにあたり、常にモチーフとなるストーリーがあるようです。ちなみに、彼は「ブルースは、ストーリーを語るためのこれ以上ない美しい器だ」と言って、21世紀のブルースマンを自称しているのですが、彼のいう「ブルースマン」は、この前学んだ「ストーリーウィーバー(物語を紡ぐ人)」という概念とかなり類似しているなあと思っています。物語をキャッチし、運び、語り、形を整えるひとです。

ストーリーに基づいた複数の視点を持っているキャラクターを、曲の中に登場させたい。そして、そのキャラクターたちに、何らかの主張を持たせたいんだ。…一人称でストーリーを伝えようじゃないか。ストーリーテラー自身にもストーリーそのものにも、色んな物事に関してちゃんとリアルな主張や意見がある、そういう曲を書きたかった。そういう曲を、俺自身も聴きたい。誰かに話しかけてほしいんだ。そして、何かを考えさせてくれて、何らかのアイデアを掘り下げたくなるような曲を聴きたい。キャラクターたちが考えていることは、正しいかもしれないし、或いは、間違っているかもしれない。俺には分からないよ。でもとにかく、彼らには主張があるのさ。キャラクターを核に曲を書く時には、ほかのキャラクターや人物について調べて、その人たちがどんな風に生きたのかを知ることも、すごく参考になる。そうやって得た知識が、曲のキャラクターのパーソナリティの一部になったりもするよ。

まだまだあるのですが、それらを踏まえて、彼のパフォーマンスの映像をひとつ共有します。それで、あなたにも何かヒントを見つけてもらうのがいい気がします。
私は、このパフォーマンスを、とても対話的だと思っています。

何より面白いと思うのは、この映像の中でもっとも聴衆の声が際立って盛り上がる瞬間が、ステージの上にいるパフォーマーたちの絶妙な掛け合いや、闇を切り裂くいかずちのようなギターソロでもなく、

彼が場を見つめる沈黙の時間、


つまり、

全員、ステージにいるバンドまでもが、そこに現れようとするものを「聴く立場」に立った時、

であるということです。 

そこには、演奏者や聴衆という境目はなく、場全体が、この初期衝動的な音楽のための、「器になっている」と、私は感じるのですがどうでしょうか。

あなたはジャックがつくる場からなにを感じましたか?




ちなみに、動画だと観察しかできないので、まずは「音楽に参加」してみるのことをオススメします。特に、「次の瞬間に何が起こるか、コントロールされていない」場をつくるミュージシャンの。

観察だけでもおもしろいですけどね。ライブ映像で、バンドメンバーの動きや表情などのグループプロセスを見るのが、私の中で、至高の遊びなのですが、もしそういう奇特な方がいればいつでも一緒にやりましょう。

おかわりしたい方は、こちらをどうぞ。


あとは本人に聴いてください。こちらは、かなりナイスなインタビュー集。


※参考
rockin'on 2014年7月号
Skream! 2014年6月号
Realsound 2014年6月号
その他インタビューは最後の動画の中から。

まだ語られていない物語は何ですか

ご覧いただきありがとうございます。反町キヲイチロウのブログです。群馬ローカルのママチャリで行ける範囲で、参加型の場づくりを練習しています。

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