ローカルの未来が「懐かしい」ってなに?(グンマーvs海士町懇談会レポート)

群馬県の甘楽町を中心に活動されているNPO法人自然塾寺子屋さんのお呼びかけで、群馬県各地やJICAなどでローカルの価値創出に関わる人たちが集まりました。ゲストに隠岐郡の島である、島根県海士町の方々をお招きしています。
高崎市の名産、今井だるまさんのだるまが待ち構えます。(最後にお土産としてお持ち帰りいただきました)
飲み会、、なのですが、光栄にも主催の矢島さんから「むちゃぶり」をいただき、参加型の学びの場とすべく、私がホスティングをすることに。
飲んで楽しかった、だけではなく、場に意味の流れをつくることにしました。

そこで、事前の打ち合わせの中で浮かび上がってきたのが、こんなキーワードです。

「懐かしい未来」

これは自然塾寺子屋さんが目指すビジョンに関わる言葉です。

ん?でも、未来が「懐かしい」ってどういうことなのでしょうか。
普段、皆さんは懐かしいという言葉をどのようなときに使いますか。多くは過去の事ですよね。ああの時のことを思い出すなぁ、懐かしい。

でも、自然塾寺子屋さんは、未来を「懐かしく」したいんです。

未来が「懐かしい」ってどういうこと?
そもそも「懐かしい」ってなに?

①そのあたりの意味するところが、今回の参加者の中で、よりクリアに理解され自分の言葉になるということを今回のゴールのひとつにしました。

それに加えて、今回の飲み会の目標(終わった時の状態)は全部で4つにしました。

②参加者どうしがお互いの「懐かしい未来」についてのイメージを、今より一歩共有できている。

③そのために、今後、何かを内発的に何かをしたいと思っている。

④今後、参加者同士の新しい協力関係も生まれたらうれしい。

1,2は必須目標、3,4はチャレンジ目標という感じでしょうか。目標がはっきりすれば、場のデザインやすべきことも明確になってきました。

今回は飲み会なので、最初の方向づけが勝負だと考えました。乾杯して飲み始めたら、場はもう参加者のものになるからです。途中で、変に会議やワークショップっぽく、私が「次はこのトピックについて話しましょう」などとしても興ざめですし、参加者は言うことを聞いてくれません。最初の10分で、「参加者に、どれだけテーマについて話したい気持ちになってもらうか」が重要です。参加者のテーマに対する好奇心をあおることが必要でした。

そのために今回投げかけたのが以下の問いです。

私たちの未来を「懐かしい」ものにするために、今、私たちが大切にしたい事は何でしょうか?


ちなみに、今回、私の知る限りでは世界初の試みとして、飲み会に「問いのおしながき」を置いておきました。内容はこんな感じです。(可愛く作ったのに写真を撮り忘れました!)
  • あなたが「懐かしい」と感じたエピソードは?
  • そもそも「懐かしい」とは何でしょうか?
  • 未来が「懐かしい」ってどんな状態ですか? 

さてさて、そんなこんなで当日を迎えまして、まずは代表の矢島さんにお話を伺います。
青年海外協力隊としてパナマに派遣された矢島さんは、いわゆる途上国支援をされました。そこには必要なものがないと思ったが、あった、と言います。何があったのか伺ったところ「家族的なつながり」の豊かさがあったといいます。なるほど、少し「懐かしさ」の意味するところに近づいてきます。

ご本人の言葉を引用します。
我々、寺子屋メンバーや青年海外協力隊経験者は、少なからず途上国と思われている国で我々の活動以上に大切なものを得ることが出来ました。それはそれぞれ違いがあるかと思いますが、私は、懐かしさだったのです。私が生まれた時代や農村の繋がり、親兄弟、近所…などなど。グローバリズムな世の中になり、本当に大切なものが簡単に削ぎ落とされてしまう…我々は、「懐かしい未来」に向かっていきたい!守っていきたいと強く感じています。

もう会場はワサワサです。皆楽しそう。

そして、次にエピソードを話してくれたのが、同じく自然塾寺子屋のえりこさんです。ご本人の言葉を共有させていただきます。
わたしも甘楽生活が3年半になり、帰属意識を持ちにくい典型的な日本の郊外タウンで育ったわたしにとっては、農村は未体験なものでしたが、ますますローカルの力強さと未来を肌感しています。一方で、両親が遊びにきてくれた際はわたしの今の生活や価値観に触れ、故郷を思い出しうるうるしていました。わたしは未来にわくわくし、両親は過去に想いを馳せ、異なる時間に心はありながらも、同じ価値観を共有できた懐かシナジー的な時間でした。

これらのストーリーから気づくことがたくさんあるのですが、1つは、

生きる世代や場所が異なっても「懐かしさ」という言葉が指すものは、人と人の関係性を橋渡して、お互いの大切なものを共有させ、感動を呼び起こすものであると言うことです。


そして、いよいよゲストの海士町役場の濱中さんから、海士町の実践をお伺いしました。
内容とはうらはらに、もう真面目な話やですわぁ、とイヤイヤっぽく話す雰囲気の濱中さんの語り口は中毒性が高いです。

細かい話は、最下部のリンクを参考にしていただくとして、私が聞き入った部分を共有します。

海士町にすてきな信条がある。

バックキャスティングで考えている。未来からはじめる思考です。

システムのポジティブなループを目指している。大きな視野から有機的に関係をつくっている。
この視点から様々な施策に取り組んだ結果、人口や出生率は増加傾向にあるといいます。

そして、これです。
アメリカが主導してきた世界では海士町や”開発途上国”は最後尾になります。でも、海士町は、その物語を手放して、自分たちが望むストーリーを描いています。それは、これからの豊かさの物差しでの最先端を行くこと。少子高齢化や人口減少など、成熟社会が今後迎えることになる課題を、先進的な取組で解決してみせるというのです。

それは、海士町が世界のタグボート、つまり、タンカーを先導する小さな船の役割になるということです。


これめっちゃいい捉え方だなと思いました。私たちの社会は、大企業のためのグローバリゼーションや社会の工業化を支えてきた、効率と管理のしやすさを大切にする中央集権的なシステムから、未だに影響を受けています。その支配的な物語は強く、それが押し付けであることに気づくことすら難しいこともあります。私たちの豊かさの基準、働き方や生き方に対する価値観にまで絡みついています。

そのために、私たちはどのくらいのものを失ってきたでしょうか。
規模が大きく、物質的に多いことが幸せのために必要であること。忙しく勤勉に働き、できるだけたくさんのお金を稼がなくてはいけないこと。

それは私たちが生きたいと望んでいる社会のあり方ですか?

その物語の続きが知りたくて、ワクワクしますか?

その歪みは環境破壊、貧富格差、失業、紛争などさまざまな社会不安となって、私たちの精神的な豊かさを蝕み続けていないでしょうか。

さて、その後は、参加者一人ひとりに思いを吐露していただいたり、感想のシェア等をしていただいたところ、今回の飲み会で、

「私たちが押し付けられてきた物語は、もう賞味期限切れだよね」

ということが共有されたのではないかと私は感じました。
 
場のデザイン上、収束のフェーズは用意していませんでしたが、なにか、飲み会の混沌とした場から、

私たちなりの「懐かしい未来」がもくもくと立ち上がっていくような感じがしていました。


先ほど言ったように、過去からくる思い込みで動いている社会は、一部の社会的・経済的権力層が望むようにそのまま進み続けます。しかし、ローカルを生きる私たち一人ひとりの主体的・内発的な意識転換、そして、その連帯すれば、「私たちが望む物語」への転換は実現できる、そんな希望を感じたところです。
最後に海士町の濱中さんから、グンマーのみんなにお土産をいただいたのですが、その様子を見ている矢島さんがの幸せそうな笑顔がかわいくて私は死にそうでした。
また、えりこさんからは「言葉未満の思いを汲み取っていただいた」というメッセージもいただき、場づくりのホストとしては、胸を撫で下ろす思いです。

さて、

私たちの未来を「懐かしい」ものにするために、今、私たちが大切にしたい事は何でしょうか?


その問いの中に、明日の私たちに本当に必要な物語の筋書き、そして、行動していくためのヒントがあるのではないでしょうか。

近所のみんな、明日一緒に何をしましょうかね。なんだかワクワクですね。

以上、雑駁なまとめとなってしまいましたが、今回ご一緒できた皆様、本当に貴重な機会、ご縁ををありがとうございました。4つのうちの目標達成率がどのくらいだったか、今度知りたいなあ。


今回、内容だけでなく場づくり的な観点からも振り返りました。私は、人の成長や変化に関わるための、この手の「むちゃぶり」は、積極的にお受けしていますのでご相談くださると嬉しいです。
当日も酔っ払って語りましたけど、だって私は、カモミールだから。ギリシア語で「地上のりんご」、花言葉は「逆境におけるエネルギー」。踏まれると、いい匂いがするはずなんです。

それでは、また次のセッションでお会いしましょ〜。

■NPO法人自然塾寺子屋

■海士町
■「懐かしい未来」の提唱者、ヘレナさん
■ヘレナさんと直接お話できました。ローカリゼーションフォーラムの参加報告。

■おまけ
実はこの飲み会の前後に、予習と振り返りのためにお茶してたのですが、なんとそのビールは、(あビールって言っちゃった) 作り手のご本人と話しながら一緒に飲んでたんです。3種類を、お二人の醸造家から。どんな人生を歩んできたかなんて話をしながら。私はいろんな物語の交差点に立っていて、もう心いっぱいです。お金はないですけど、こういう豊かさを自慢していきたい。ローカルはいいですよ〜。
ちなみに、その2人とは高崎のシンキチ醸造所の堀澤さんと、ブリスベンブリューイングから今後アメリカで活躍されるサトシさん(なんと甘楽町のご出身)

■シンキチ醸造所

まだ語られていない物語は何ですか

ご覧いただきありがとうございます。反町キヲイチロウのブログです。群馬ローカルのママチャリで行ける範囲で、参加型の場づくりを練習しています。

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